車の旅、車の生活

ここ一年くらい車で旅をしている。
車で寝て、車で仕事して、多くの時間を車で過ごしながら、毎日のように移動を繰り返し、日本国内の広い範囲を回っている。
色々な場所で、その土地の唄を聴き、その土地の踊りを踊り、その土地の人としゃべり、気持ち良い場所を散歩し、腹が減ったら何か食べて、静かな場所を探して寝る。そんな感じ。

去年の3月に会社を辞めて東京を出た。
次の家を決めずに部屋を解約したので、手で持てない持ちものは全部処分した。
年季の入った古いミニバンを安く買い、生活できるように少し改造を加えて、必要最小限の荷物を乗せて出発した。

車っていうのは「移動する部屋」だ。
部屋機能があることによって雨風をしのげ、寝ることができ、家財道具を保管することができ、食事をしたり、本を読んだり、着替えたり、映画を見たり、つまり「過ごす」ということがそれなりに快適にできる。
僕の車は大きなバッテリーを積んでいて走行充電ができるので、継続的に電気が使える。旅先でパソコンを開いて仕事ができるし、冷蔵庫が使えるし、お湯を沸かしたり、ちょっとした料理をしたりもできる。

移動機能に関しては言うまでもないが、のんびり下道を走ることもできるし、高速に乗れば時間を金で買える。フェリーでワープという選択や、駐車して飛行機や新幹線っていう選択もたまにする。
交通の便が悪い場所に時間を縛られずに行けるのが大きくて、とくに僕みたいに僻地から僻地の移動が多い場合は車が圧倒的に便利で、代替の選択肢がない。

この部屋機能と移動機能があることによって、睡眠を挟んで持続的な移動が可能となり、どこまででも長い期間楽に行くことが可能になる。
予約も計画も何もしないで、思い立ったらすぐに移動することができる。寝る場所と時間を過ごす部屋はもうあるのだ。
洗濯機やトイレ、風呂はないので、これらはアウトソーシングになる。
洗濯はコインランドリー、風呂は温泉。トイレはいたるところにあるから困らない。コンビニ、スーパー、道の駅、温泉、宿、カフェ、公衆便所などなど、どこにでもある。

車の生活で一番不可欠なのはネットだ。
移動しながら方針を決めていくので、リアルタイムでの情報収拾が欠かせない。
今夜どこで寝るか、どこの温泉に入るか、明日どこで仕事をするか、どこで食事を取るか、全部ネットで逐一情報を集めて行く。
やはりGoogleの存在、特にGoogleマップの存在が大きくて、これのおかげで初めての場所でも全く道に迷わないし、周辺情報も瞬時に手に入る。
僕はネットのおかげで仕事ができて、生きながらえることができている人間なので、僕の人生はつくづくネットに救われているなぁと思う。

宅配便の荷物を受け取るのが難しいとか、夏暑く冬寒いとか、ネガティブな面は多少あるが、毎朝違う場所で目覚め、潮の匂いだとか、鬱蒼とした森だとか、満天の星に包まれて過ごすのは刺激的で、楽しいものだ。
旅先では想定外のことがよく起きるもので、やけに気の合う人に出会ったり、面白い情報を持っている人を紹介してもらったり、思いがけない場所で貴重な資料が見つかったり、そういったときに後ろ髪を引かれながら自宅に戻らなきゃいけないということがないのは大きくて、心いくまで獲物を追い込むことができる。
仕事の種類や家族の状況などで出来る人は限られると思うが、もし可能ならば挑戦してみると良いと思う。